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エリザベス71%
2022.02.08
熱帯で育つカカオは多年生植物で、花の最盛期から受粉と結実、実が成熟するまでのサイクルが約半年であるため、主収穫期と副収穫期の年2回の収穫が一般的となります。赤道に近いコロンビア南部のトゥマコではその差が顕著で、主収穫期の5ヶ月間に年間の7割近くの収穫が集中します。
太平洋に面したトゥマコの3大産業は漁業、林業、そしてカカオ産業。とりわけインフラ整備の進んでいない農村地域は殆どの方がカカオ栽培に従事していますが、収入の安定が難しく若年層の農業離れも進んでいて、生産者の高齢化が目立ってきているのが現状です。国境付近で長い間治安の問題などもあったため農業開発が遅れ、今も生活が窮困している人も多い地域。そういった中でカカオを栽培しながら農閑期にも収入が見込めるよう、他の作物も推奨する国営農業研究所や市、地域評議会が連携した農業プロジェクトが導入されるようになりました。

(左)カルロスさんの農園のカカオの木(手前)とコショウの木(奥)/(右)コショウの木とブランカさん。
その一つが、コショウ。熱帯地域で育つコショウの木はカカオ農園で育てることも可能で、現在トゥマコでは栽培農家が少しずつ増えてきました。とても美味しいカカオを栽培する私たちの友人カルロスさんの農園でも現在沢山のコショウの木が植えられており、カカオで得る収入の隙間をこの“胡椒”で埋めることで収入の補填を試みています。2年前にこの話を聞いたとき、私たちはトゥマコのコショウや農業プロジェクトについて多くの方に知って頂こうと思い、地域のカカオと黒胡椒を合わせたチョコレートを作りました。

(左)熟す前と赤く熟してきたコショウの実。緑を収穫して黒胡椒に。(右)カカオ豆の乾燥台で黒胡椒を乾燥。
カカオの木の直ぐそばで育てられているコショウの木。蔓状に育つこの木から房のように成る実が赤く熟す前、緑色の状態のときに手摘みで1つ1つ収穫します。カルロスさんの農園では、普段カカオ豆を乾燥させる木製の台が農閑期は空きベット状態なので、ここに粒状にバラした緑色のコショウの実を並べ、じっくりと天日乾燥させます。鮮やかな緑色の粒が次第に黒くなり、変貌を遂げた黒胡椒をそのまま噛んでみると、爽快でフレッシュな香りと、鮮烈な辛味が口の中いっぱいに広がります。
その黒胡椒を粗挽きしてチョコレートに練り込み、さらに微細化するまで挽いたチョコレート。封を開けた瞬間の黒胡椒の香り、口の中で広がるカカオ香りと酸味と甘味。“ピリリ”な辛味の後はチリチリ喉に広がる快感、何故だかまた口にしたくなるもどかしさと余韻。ホットコーヒーと合わせれば眠気がよく冴え、お酒と合わせるとその一口が止まらなくなる、そんなチョコレートです。お伝えしたいこの香味を、1年のお休みを得て2年ぶりに作りました。
大半のカカオ農家が、カカオの収入だけで生計を立てていくことは難しいのが現状です。チョコレートを召し上がって頂きながら、変わりゆくカカオの世界からお伝えする色々なメッセージに、ほんの少し耳を傾けて頂ければと思います。
カカオハンター®︎ 小方真弓
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